日本発達心理学会

理事長挨拶

第4代理事長(第5期)
麻生 武

2003年1月13日に開かれた日本発達心理学会第15回理事会で、新理事長に選ばれてしまいました。この事実を知った学会員のみなさんもさぞかし驚き当惑されているのではないかと思います。その思いは、私も同じです。前理事長の突然の辞任からこのようなことになるとは思ってもみなかったことです。今、大変な責任が降りかかってきたことに改めて、その責任の重さを感じ覚悟を決めています。これまでの歴代の理事長は、すべて本学会を育ててきた、学会の生みの親とも言えるりっぱな方々です。私は違います。理事になったのも2002年4月が初めてです。私は発達心理学会を創った側ではなく、むしろ逆にこの学会に育ててもらった側の人間です。論文の書き方を教わったのも、初めて発心に論文を投稿したときです。論文の審査のし方を教わったのも、発心の常任編集員に加えてもらってのことでした。また、自分が孤立しているのではなく、同じ志を持つ人たちが少なからずいることを教えてもらったのもこの学会のおかげです。もし、私が理事長になることに少しでも意義があるとすれば、育てた世代から、育てられた世代に、松明が受け継がれたということだと思っています。発達心理学会は、単なる同業者の利益団体として発足したのではなく、「基礎学問を深めそれを具体的に社会に生かそうとする」高い志のもとに誕生したのだと確信しています。その精神のひとつが具体化し、今年、新たに臨床発達心理士の資格が誕生することになりました。初心忘るべからずです。1989年に発足した学会の初心を忘れず、風通しのよい、いつまでも好奇心旺盛で意欲的な若々しい学会にしていければと願っています。そのために、未整備の学会運営のルールを明文化し、新しい体制を創り、学会のさらなる活性化をはかっていきたいと考えています。同じ志をもつ仲間である学会員のみなさんのご協力、そして忌憚のないご意見を心から期待しています。よろしくお願いいたします。
2003年1月19日